建物の価値

建物には、目的がある。そして、それは普通、その外観を通して知ることができる。マンション、レストラン、デパート、ショールーム、オフィスビル、役所、公民館、消防署などは、一目瞭然。

二階建てのレインボーブリッジ、一階の下道の方から自宅に帰ると、旧海岸通りを通る。芝浦から札の辻に方向へ向かう時に、八千代橋という交差点を右折する。その右折レーンで、信号待ちをしているときに見えるビルが、昔から気になって仕方がなかった。まず猛烈にカッコいい。そして、建物の目的が何なのか、全く見当がつかない。

敢えて言うなら、そこに存在することそのものが目的であるかなように、強烈なオーラを放って、そのビルが立っているのである。

特に夜その存在感を放つSHIBAURA HOUSE

特に夜その存在感を放つSHIBAURA HOUSE

住居?こんなに丸見えじゃ住めない。生活感も全くない。
ホテル?そもそも部屋が見あたらない。
レストラン?食事をしている人はいない。
オフィス?誰も働いているように見えない。
ショールーム?何も展示されていない。
博物館?にしては小さい。
ブティック?でも肝心の洋服がない。
カフェ?のような気もするが、看板も商売っ気もない。
でも、人はいつもたくさんいる。

その前を通るたびに、僕の頭の中は??????が充満していった。

そして先日、その謎が解けた。

株式会社広告製版社の伊東社長とは、銀行が主催する経営者の会の勉強会で、お会いした。そして、あのビルが広告製版社さんのもので、その名前が”SHIBAURA HOUSE“だとわかった。先日は、その勉強会の一環で”SHIBAURA HOUSE“に伺い、伊東社長のお話を聞いた。

まずそのデザインは、かの安藤忠雄氏や丹下健三氏も受賞した、その年の世界で最も優秀な建築家に与えられる「プリツカー賞」の2010年受賞者である世界的建築家妹島和世氏によるもので、全面ガラス張りの透明な外装に、壁の存在が最小限の中味。とてもクリーンで大胆な外観と構造。

そして、ぶっ飛んでいるのはデザインだけではない。
1階の「リビング」はフリースペース???!!!で、フードとドリンク持込可!?と、いきなりわけがわからない。2・3・5階はレンタルスペースで、誰でも借りることができる。そして4階だけが広告製版社さんのオフィス。各フロアにコンセプトがあり、それぞれが個性的でクリエイティブ。僕も今度、会社の会議をここでやりたくなった。良いアイディアが出そう。

大通りに面していて、オフィス街のど真ん中、目の前には大手のホテル。所謂土地資産活用という観点で、この建物の立地条件と容積から算出される経済価値を考えると、おそらく世の中の、ほぼ全てのオーナーは、マンション、ホテル、テナントビルなど、現実的な収益を得られるスペースの運営を選ぶだろうし、それなら銀行も喜んで建設費を貸してくれるだろう。

しかし、”SHIBAURA HOUSE“は違う。目先の賃貸料は追わず、社会と地域のアイコンとして、世の中にメッセージを発することを選び、地元社会に貢献し、何よりも、経済前提では得られないであろう、”楽しいスペース”を創造した。でも、この世の中には、まだ”楽しいスペース”なんてものを評価する指標も方法も無い。そんなものは、ただの粋狂だと言われるのが関の山である。だから、普通の経営者ならこんな怖いものは建てられない。

広告業界というデザインが重視されるフィールドにおいて、この建物が、そのビジネスを活性化させるという役割を果たし、地域のランドマークとなり、口コミでネットを通じて情報発信がされているという。

ここまで書いて気づいた。僕自身まだ理解していない。この建物の本当の価値を。
この意味不明の美しい物体は、複雑に多様化されたビジネスや情報の社会において、メッセージを放つ。「みんな本当に幸せか?本当に大事なのはお金じゃない。心だろ?」と。

経済も大事だし、精神的幸せも大事。どうすれば両立できるんだろう?と考えている、まだまだ迷える子羊の僕に、伊東社長から、最後にとどめの一言。
「どうせやるなら中途半端はダメですよ。やりきらないと。」

深い。

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