無限の可能性

すっかり遅くなってしまったが、入社式の話である。

昨年1月に、広島のポエック社とジョイント・ベンチャーで立ち上げた、株式会社Amnosは、「ハイパードライ羊膜」という特殊な方法で乾燥された羊膜を製造販売するための会社だ。羊膜とは、母体のなかで胎児が育つ羊水を包む袋の皮である。この羊膜は、受精卵が子宮に着床した直後にできる、妊娠初期の非常に未分化な細胞からできている。言い換えると、これから脳、背骨、内蔵、四肢など、何にでも変化することができ、急激な成長をしようとしている細胞なのである。

この羊膜は、代用膜となる。例えば、火傷の際に、自分のお尻の皮膚を移植する代わりとなる。目の角膜に疾患を持つ患者さんが、ドナーの非常に少ない角膜バンクからの提供を待たずに、角膜の手術を受けられる。難治性の耳の疾患で鼓膜再生手術の際に、手術のリスクが高くなるのを防ぐなど、多くの分野で、その有用性が認められている。生の羊膜では、取り扱い、保存、輸送の全てに問題があったが、ハイパードライ羊膜はそのすべてを解決し、生羊膜とほぼ同等の能力を維持している。

少し宣伝になってしまったが、書きたかったことは、TSSの新入社員はもちろん、世の中すべての新入社員は、この羊膜と同じ「未分化な細胞」だということだ。社会人としてスタートを切るこの時は、何にでもなり、何でもでき、急激に成長できる可能性を全員が持っている。

これからの世界において、保証されたものなど何もない。戦後から高度経済成長、バブル期までの日本では、皆ががむしゃらに働くことで、皆が報われた。社会全体が同じ方向に進み、働けば働くほど、成果となり、報酬を得ることができた(のだろう。学生だった自分の推測)。皆と一緒に大きな船に乗れば、少なくともその時より良いどこかに行けた。しかし、その大きな船が迷走したり、沈没したりしてしまう今、どんな大きな船も安全ではなくなった。一人ひとりが、まず自分自身のアイデンティティを確立させ、自分の乗る船の行き先を認識し、共感し、その中で明確な役割を全うしなければ、今よりも良いところに行けなくなっている。何よりも自分自身で生きていくことのできる強さを身につけなければならない。

誰にでもなれて、何でもできる、羊膜のような可能性を持つ今年入社した4人の新入社員。みんなが、「TSS号」クルーの一員として、自分探しの旅に出た。この船は決して大きくないし、これから進む航路は、荒波も嵐も待ち受けている。何でこの船に乗っているのか、どこを目指しているのか、どうなりたいのかを探していかなければならない。ただ乗っているだけでは振り落とされてしまうのだ。そして、それは他のどの船も全く同じでなのである。TSSと世の中のすべての新入社員の皆さんの成長と発展を心から願う。

今年の新人4名です!

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